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骨粗しょう症

骨粗しょう症

骨卒中を予防しよう!

骨粗しょう症の治療目標は「骨卒中」の予防です。
「骨卒中」はまだなじみのない言葉かもしれませんが、「脳卒中」はよくご存じでしょう。脳の血管が詰まるなどして「脳卒中」を起こすと、その後長く体の動きが悪くなり、結果として寿命が縮まり、介護が必要となるリスクが高くなります。骨折のうち手足の骨折は大きな影響を残しませんが、背骨と太ももの付け根の骨折は、「脳卒中」の時と同じように、その後長く体の動きが悪くなり、結果として寿命が縮まり、介護が必要となるリスクが高くなることが分かっています。
すなわち、「骨卒中」は「脳卒中」と同じように、一生予防しなければいけないものなのです。

「脳卒中」を予防するためにはその原因となる高血圧症や脂質異常症があるかないかを調べて、あればそれをきちんと治療し一生コントロールすることが大切です。それと全く同じように、「骨卒中」を予防するためにはその原因となる骨粗しょう症があるかないかを調べて、あればそれをきちんと治療し一生コントロールすることが大切となるわけです。

養​老​整​形​外​科​ク​リ​ニ​ッ​ク​は​骨​粗​鬆​症​専​門​クリニック​を​自​負​し​、​正​確​な​診​断​と​独​自の​シ​ス​テ​ム​に​よ​る​丁​寧​な​生​活​指​導​、​適​切​な​薬​物​療​法​により、一生、新たな「骨卒中」を予防するお手伝いをします。

どれぐらいの人が骨粗しょう症?

「骨卒中」の一つである大腿骨近位部骨折に関連する太ももの付け根の骨の量で調べると、女性では50歳代7%→60歳代23%→70歳代42%→80歳代65%が、男性では60歳代8%、70歳代23%が骨粗しょう症の状態です。
したがって、女性では60歳以上、男性では70歳以上で5人に1人以上が骨粗しょう症となっています。この年齢で骨粗しょう症のチェックを一度は受けておくことが必要と思われます。

骨粗しょう症による骨折

「骨卒中」である背骨の骨折と太ももの付け根の骨折は絶対に防ぐべき骨折で、それがあれば骨の量にかかわらず骨粗しょう症と診断され治療する必要があります。
10年間で背骨の骨が折れる確率は、女性で60歳代14%→70歳代22%、男性で60歳代5%→70歳代11%と報告されています。
太ももの付け根の骨折発生率は。100人の人を1年間観察すると女性で70歳代0.3人→80歳代1.6人→90歳代3.2人、男性で80歳代0.6人→90歳代1.5人となっています。かなり多くの方々が「骨卒中」を起こしているのがお分かりかと思います。
「骨卒中」のプロローグとでもいうべき骨折が、腕の付け根の骨折、手首の骨折、肋骨骨折、骨盤骨折、下腿の骨折の5か所です。
転倒した程度の軽い外力でこれらの骨折が起こった場合は、骨粗しょう症である可能性がかなり高くなります。すぐに骨の量を測った方が良いでしょう。

どんな場合に骨粗しょう症を調べるの?

「骨卒中」を起こした場合は、すぐに骨粗しょう症の治療が必要ですから、必ず調べなければなりません。また、前述の「骨卒中」のプロローグというべき5か所の骨折が起こった場合も、必ず骨粗しょう症の検査を行うべきです。 
その他、「身長が低くなった、腰や背中が丸くなった、腰や背中が痛い、両親どちらかがが太ももの付け根を骨折した」場合も、骨粗しょう症が疑われます。検査をすることが望ましいでしょう。

骨折はドミノ倒し

背骨が一度でも折れたことがある人は、一度も折れたことがない人と比べると、新たに背骨の骨折を起こす危険性は3~5倍になります。新たに太ももの付け根の骨折を起こす危険性も2.5倍になります。
そして、3人に一人は骨折してから1年以内に新たな骨折を起こしています。そして、3か所以上背骨の骨が折れると、折れていない人に比べて死亡率が4倍になるといわれています。
すなわち、骨が折れた人はその後もとても骨が折れやすく、放置するとドミノ倒しのようにどんどん骨折が重なっていき、最後に死亡してしまうということになります。
しかしながら、きちんとした治療を行えば骨折のリスクを確実に減らすことができることも分かっています。
WHOは「Stop at One : Make Your First Break Your Last」 = 最初の骨折を最後の骨折にする=新たな骨折を起こさないよう治療する ことを勧めています。

骨の量の検査:背骨と太ももの付け根の骨の量を測ることの大切さ


骨粗鬆症の診断には骨の量を測ることが大切です。一般的には手首や手指、踵で測ることが多いですが、大切なのは「骨卒中」を起こす背骨と太ももの付け根の骨が折れやすいかどうかですから、この2か所の骨の量を測ることが重要です。
また、骨粗鬆症の薬の治療により、骨の量は増えてくるのですが、手首や手指、踵ではその効果の評価は困難で、これができるのは背骨と太ももの付け根の骨の量です。
養老整形外科クリニックでは全身DXA(デキサ)の機械でこの2か所の骨の量を測定しています。

どんな検査をするの?

レントゲン検査

「骨卒中」である背骨の骨折の内、3分の2が知らない間に折れている「いつの間にか骨折」であることがわかっています。したがって、症状がなくても背骨のレントゲンを撮影します。

骨塩定量

DXAの機械を使って、背骨と太ももの付け根の骨の量を測ります。

血液検査

骨粗鬆症と診断された場合は、どの薬を使うかを決めるために血液検査を行います。一般的な肝臓や腎臓の検査に加えて、血液中のカルシウムとリン、骨代謝マーカーと呼ばれる骨が現在どの程度壊されているかを見る検査、必要に応じてビタミンDが足りているかを見る検査を行います。

いつ、薬をのみ始めるの?

以下の4つのように、「骨卒中」を起こす危険性が高い場合に薬での治療を開始します。

1.「骨卒中」である背骨の骨折と太ももの付け根の骨折がある場合
2.「骨卒中」のプロローグの骨折(腕の付け根の骨折、手首の骨折、肋骨骨折、骨盤骨折、下腿の骨折の5か所の骨折の内いずれか)があり、かつ骨の量が若者の80%未満である場合
3.骨の量が若者の70%以下である場合
4.これまでに「骨卒中」や5か所のプロローグの骨折がなく、骨の量が若者の70%より多く80%未満で、かつ、血のつながった両親のいずれかが太ももの付け根の骨折があるか今後10年間の骨折確率(FRAX)が15%以上の場合

薬について

骨粗しょう症による骨折は、薬の治療で確実に減らすことができます。しっかりとしたエビデンスのある薬のなかから、患者さん一人一人の状態に最も適したもの選んで使います。

・骨の代謝を少し抑えて骨の質も改善することにより骨折を防ぐ薬:(内服薬)エディロール、エビスタ、ビビアント 
・骨の代謝をしっかり押さえて骨折を防ぐ薬:(内服薬)ボナロン、フォサマック、アクトネル、ベネット、ボノテオ、リカルボン、ボンビバ、(注射)ボナロン、ボンビバ、リクラスト、プラリア 
・骨をつくる薬:(注射)フォルテオ、テリボン
・骨代謝改善薬:(注射)イベニティー
・ビタミンD製剤:(内服)ワンアルファ、アルファロールなどがあります。

日常生活でできること

日本人の多くがカルシウム摂取不足の状態です。当院で、女子栄養大学の上西先生とともに開発した「カルシウム自己チェック表」を用いて、カルシウムの1日摂取量を大まかに知り、不足分を食事あるいは薬で補うようにします。 
太ももの付けのの骨折の予防には転倒しないことが重要です。片足立ちでのバランス訓練やスクワットなどのロコトレを指導します。
日光浴、ウォーキング、軽い運動やスポーツも大切です。実際にできることを相談しながら行っていきます。

治療を始めても、途中でやめてしまう人が後を絶ちません

せっかく骨粗しょう症であることがわかり、治療を開始したにもかかわらず、何もしなければ半分近くの患者さんが途中で治療をやめてしまいます。
そして、しばらくしてから骨折を起こして外来にみえるという不幸な方が後を絶ちません。
きちんと治療を続けていれば、確実に骨折を減らすことができるのに、とても残念な結果です。

その一番の原因は、骨粗しょう症を治療する大切さを本人及び家族の方が理解していないことです。
症状のない脂質異常症を放置しておくと「脳卒中」になってしまうのと同じように、症状のない骨粗しょう症を放置しておくと「骨卒中」を起こして、ともに不幸な結末を迎えることになることを忘れないようにしなければなりません。

骨健康プロジェクト


そこで私たちは、「ほね健康プロジェクト」を始めました。
当院には、日本骨粗鬆症学会が認定する骨粗鬆症マネージャーの資格を持つ看護師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、レントゲン技師がいます。
「ほね健康プロジェクト」では、この内看護師、管理栄養士が中心となって食事や運動、骨粗鬆症の病態や薬について1年間の指導を行っています。月に1回来院される日に、マンツーマンで骨粗鬆症について学んだり、食事を見直したり、また、いろいろな相談に乗ったりしています。
目標は「目指せ元気な90歳!」で、当院に来ていただくすべての方には元気に笑って90歳を迎えていただけるよう、患者さんと私たちが力を合わせて楽しく目標に向かって進んでいます。

歯医者さんとの連携

当院では骨粗鬆症を治療している方には医科歯科連携を行っています。
骨吸収抑制薬(骨が壊れのを抑える薬)などを使うと、薬が骨の代謝を抑えますから骨がバイ菌に対して弱くなります。虫歯や歯周病があってバイ菌が骨の中に入り骨髄炎を起こしてなかなか治らないという副作用(顎骨壊死・顎骨骨髄炎)が極めてまれに報告されています。
これを防ぐために、薬の投与前に歯科で歯の状態を診察していただき、必要な治療の後問題がないことを確認してから薬を開始します。治療中も歯科の先生と連携して、口腔内に問題が起きた場合は相談しながら治療を進めていきます。
そもそも、歯は体の健康にとってとても大切で、口腔内が不潔だと生活習慣病を起こしやすかったり、かみ合わせが悪いと認知症になるリスクも上がることもわかっています。いつまでも自分の歯で美味しくものを食べることができるよう、骨粗しょう症治療の有無にかかわらず、年に1回以上は歯科で定期的に歯石をとったり口腔内のチェックをしてもらうことが大切です。

他のクリニックとの連携

全身DXAのない医療機関で骨粗しょう症の治療を行っておられる場合は、薬の治療効果の判定が難しい場合があります。
当院では、半年に1回程度DXA検査のみを行う診診連携にも対応しています。初めての場合は、かかりつけの先生に相談していただき、紹介状をお持ちの上、クリニックに電話でDXA検査を予約してください。